『おかしな時代』は、晶文社の編集者だった著者による疾風怒濤の回想。ぼくたちが70年代にもっとも影響を受けた「犀」のマークの本がいかに作られたかを知る。『おんな作家読本』は男性至上主義の文学史を、女性作家から裏返してみた傑作。ジェンダーなんて野暮な視点ではなく、著者が手になじんだ作家だけをガイドする。『鉄の時代』は池澤夏樹編集「世界文学全集」の一冊。アパルトヘイトの決壊期を、死を間近にした老婆と宿無しの黒人を中心に据えて描く。『高円寺古本酒場ものがたり』は、高円寺の古本酒場「コクテイル」の店主が、店を開くにいたった経緯を綴る。弱気と無謀が混在する青春記とも読める。『小津ごのみ』は、小津安二郎映画を、ファッション、インテリア、雑貨、俳優たちの顔など「見た目」で語る。男性の目では気づかない小津の美意識があぶり出される。