『モダンタイムス』は 前作『ゴールデンスランバー』と対をなす作品で、「姿の見えない巨悪に立ち向かう名も無き男の物語」。私が、伊坂幸太郎と言う作家を敬愛する理由の全てが、この一冊にある!
朝比奈あすかの『声を聴かせて』には、母親という存在の痛ましさ、かけがえのなさをじっくり丁寧に描いた中編2編が治められている。表題作もいいが、同時収録の「ちいさな甲羅」に描かれた、人間関係に苦しんで、ゆっくりと壊れていく幼稚園ママの描写が胸に迫る。
中島京子の『平成大家族』は ぴりりとスパイスの効いた、今どきの家族小説で、家族ってまぁ、こんなもんだよなぁ、という柔らかなリアリティがある。
中山可穂の『サイゴン・タンゴ・カフェ』では、収録されているどの短編もいいが、夫の愛人とベトナム旅行に出かけることになってしまう「バンドネオンを弾く女」が秀逸。『ケッヘル』から始まった、「中山可穂のセカンドシーズン」がよく分かる一冊でもある。
『リリィの籠』、この作品が豊島ミホのターイングポイントになった、と思う。この作品以降の彼女の作品はどれもいいのだけど、記念碑的作品として、これを。
新人賞はもうぶっちぎりでこの作品、和田竜『のぼうの城』。読んでいる間中、「今、自分は新しい才能読んでいるんだ」という興奮を味わった一冊。