『聖母―ホスト・マザー』は、代理出産をテーマにしたサスペンス。「代理出産ねぇ、関係ないし興味もないな」と今、思われたあなた。とんでもない! すでに子供を授かった人も、もう閉経した人も、男性も、「他人事」ではないのです。読ませます、痺れます、考えさせられます! 『タチコギ』は、『太陽がイッパイいっぱい』『厭世フレーバー』『イレギュラー』と確実に読者を唸らせてきた注目の著者の書き下ろし長編。友情+家族の絆で涙腺刺激しまくりなのに、あざといと鼻白むギリギリで筆を置く巧さ。ブレイク間近の気配濃厚です。『ある日、アヒルバス』は、東京のバスガイドが主人公。この著者がお仕事小説の名手であることは十分解っていても期待値以上であること確約。『退出ゲーム』は今年読んだ所謂「学園ミステリー」の中ではベスト。切れ味の良さに唸りました。『花が咲く頃いた君と』は、最終話の「僕と桜と五つの春」が秀逸。巧くなったなぁと感服。『百瀬、こっちを向いて』…この人を新人賞に入れるのはずるい!?収録されているどの物語も甲乙付け難い、今年一番の切なさです!