レコードではなく、ネコード。レコジャケではなく、猫ジャケ。
というわけで、猫ちゃんが登場するレコード・ジャケットだけを集めたのが本書。有名無名、名盤珍盤、洋の東西を問わず、さまざまな猫ジャケが並んでいる。世に猫本は数あれど、猫と音楽を結びつけることができたのは、「レコード・コレクターズ」編集部くらいではなかろうか。
よく知られているものだと、サザンオールスターズ『タイニイ・バブルス』や、キャロル・キング『つづれおり』、あるいは、オルガンジャズの名盤、ジミー・スミス『ザ・キャット』など。近年だと、ライ・クーダー『マイ・ネーム・イズ・バディ』なんてものもあった。
共通点は「猫が登場している」という一点のみ。だから、バド・パウエル『セロニアス・モンクの肖像』と、猫(吉田拓郎のバックバンドとして活動していたフォークグループ)のベスト盤が、同じ見開きで仲良く並んでいたりする。それって、よくよく考えたら、ありえない組み合わせでは……。しかし、猫ジャケという括りを設けると、あら不思議、あたりまえのような顔で同居してしまう。という意味では、無茶苦茶な、いやいや、素晴らしい企画である。
全体は大きく5つのセクションに分かれている。1匹で登場する「ひとり猫」(『タイニイ・バブルス』、『ザ・キャット』)、2匹以上の「なかよし猫」。女性と共に写っている「美女と猫」(『つづれおり』)、男性とじゃれあう「紳士と猫」、イラストで描かれた「絵になる猫」(『マイ・ネーム・イズ・バディ』)といった具合。ちょっとした読み物やコラムも挟まっていて、これがまた楽しい。
インタビュー「猫と純音楽の素敵な関係」に登場するのは、エンケンこと遠藤賢司。還暦を迎えたいまも(ということは、ジュリーと同世代か)、旺盛な音楽活動を繰り広げている“純音楽家”である。猫ジャケを語るにあたり、エンケンは絶対に外せないだろう。なにしろ、デビューアルバム『niyago』は、猫ジャケ的な意味において、まぎれもない傑作なのだから。また、猫の歌を数多く生み出しているという意味でも、エンケンは突出している。「猫ってどこがいいんでしょうね」という質問にはこう答えている。
「やっぱりきれいというか、かわいいよね。あと、自分の姿に似てるからじゃないの。スッポンポンで武器も持たずにひとりで生きてる。かっこいいよね。雄でも雌でもぶちゃむくれでも子供でも、一所懸命生きてる。俺は尊敬するよ」
さらに、こうも語っている。
「犬もそうだけど、尻尾をバッと上げて肛門をズバーンと見せてるじゃない。ああなりたいよね! せめてステージに立つときはそういう気持ちでいたいよね。俺はこうなんだ、ってズバーンと見せる。それが俺の仕事だと思ってるから」
うーん、カッコいい。