池澤夏樹個人編集による「世界文学全集」(河出書房新社)を読むシリーズの第7回目。今回はアフリカ編。
イサク・ディネセン『アフリカの日々』、エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』、J.M.クッツェー『エリザベス・コステロ』の3本だ。
ヨーロッパからの入植者であるディネセン、アフリカの黒人そのものであるナイジェリア人のチュツオーラ、そしてオランダ系とドイツ系入植者の間にケープタウンで生まれたクッツェー。こう書いただけで自ずと3人の目線が違うのがおわかりいただけるだろう。この出自の違いはダイレクトに作品に反映されている。
〈アフリカを賛美する善意の白人農園主〉というイメージのディネセンだが、原住民への賛美と善意に満ちていつつも搾取や差別と渾然一体になっているのが『アフリカの日々』(1937年)の作品世界だ。
チュツオーラの『やし酒飲み』(1952年)は、神話的想像力がゆたかに息づいている、ガルシア=マルケス、ラシュディに先駆けるマジックリアリズムのすばらしい達成。
南アフリカからオーストラリア移住後の作品であり、後期クッツェーの代表作である『エリザベス・コステロ』(2003年)は、登場人物たちが議論を楽しむ文学論小説。主人公たちは、文学論を中心に議論を重ね、近代のそなえたさまざまな問題をくまなく洗い出してゆく。
レビュワーはおなじみ朱雀正道さん。問答無用のノンストップ原稿をたっぷりとお楽しみください。