私も、一杯やりながら創ってみたくなりました。そして、日本酒の水割りの話は、実際の体験話。「越乃寒梅」の石本酒造の社長の言葉が印象的でした。「水で割ると、いい悪いが実にはっきりします。醤油なども、そうですよ。少しでも欠点があると、そこから崩れてしまう…。逆に、きちんと造ってあれば、どんなことをしても大丈夫。燗でも、ロックでも、水割りでも、なんでも試してみてください」と言ったそうです。私も、「越乃寒梅」の大吟醸、水割りで飲(や)ってみたくなりました。
このように「百人一酒」は、お酒話のフルコース。ちょっと目次を紹介してみますと、「冷やしボルドー」、「ついにロマネ・コンティー」、「風邪退治は多酒多様」、「お屠蘇カクテル」、「クーレ・ドゥ・セランを飲む」、「中華にロゼ」、「ブローラとの出会い」等々、108のエッセイから成っています。ブローラとは、度数は50度、1967年~83年にかけて造られたシングルモルトウイスキー。飲んだあとの、おしっこが、バラの香りになるのだそうです。
そして、108(偶然だが、ちょうど煩悩の数と万智さん)番目の「出会い別れし我らゆえ」というエッセイには、万智さん作の、こんな短歌(うた)が。
四国路の旅の終わりの松山の夜の「梅錦」ひやでください
缶ビールなんかじゃ酔えない夜のなか一人は寂しい二人は苦しい
かつて会いかつて別れし我らゆえ優しく飲める夜と思えり
ホント、いいですね、酒を詠んだ短歌(うた)というものは…。
ところで、どうです、私のレビューを読んだだけでもなんだかいい気分になって来たのではありませんか?ぜひ、あなたも、ちょいと一杯ひっかけるつもりで、この「百人一酒」にお立ち寄りになってみてください。もっと、もっと、楽しい酔いごこち、いや、読みごこちが待っています。