万智さんは、ここで、「酒飲みなんて、ロクなものじゃない」とか「私は、酒に頼るような低俗な人間ではない」とか言って、酒を軽蔑して飲まない人がいる、これには、カチンとくる。と言っています。分かりますねぇ~、私も、そんな下戸は大嫌いです。
更に、この短歌(うた)です。若山牧水です。
白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ
かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ
ここでも、万智さん、こんな感慨を語っています。「しみとほる」のは、舌だったり、喉だったり、胃の腑だったりで、何故、「歯なの?」と。で、その答は!?…ぜひ、本書を読み、彼女の素晴らしい解釈と巡り合っていただきたいと思います。なるほどと、私も大ナットクでした。
もちろん、このエッセイでは、日本酒ばかりではなく、地ビール、焼酎、ワイン、シャンパン、紹興酒、泡盛、モルトウイスキー、リキュールetc…、世界の銘酒、珍酒に関する薀蓄や体験談がいっぱい。と、ここまで書いて、再び「トップダンディ」のことを詠んだ和歌(うた)を思い出し、この一首も、たまらなく紹介したくなってしまいました。
ドンペリをピーチネクターで割らないで割り箸で泡を消しさらないで
更に、私が気に入ったものに、回文の話と、日本酒の水割りの話があります。回文とは、「今朝の酒」とか「ラムの村」とかいう、上から読んでも下から読んでもという、あれ。万智さん作は…
酔いごこちいい「いいちこ」濃いよ
今酌んで今うまい「天狗舞」