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完訳 マルコムX自伝 上・下

「白黒まざっていていいのはコーヒーだけだ」と、マルコムは言った。

特集:アメリカを語る本 “Change has come to America” そしてまた、別の夢の風船を膨らます国、アメリカ 【2】
マルコムX濱本武雄
中央公論新社中公文庫BIBLIO20世紀伝記] 海外
2002.03  版型:文庫
>>書籍情報のページへ
レビュワー/北條一浩

『完訳マルコムX自伝』は、先にも書いたように、マルコムXが執筆した本ではなく、アレックス・ヘイリーによる口述筆記という体裁を取っている。そう、あの大ベストセラー『ルーツ』の作者である。ヘイリーの粘り強い努力と知性、構成力がなければこの本は完成しなかった。下巻の末尾は実に120ページに及ぶエピローグがヘイリーの署名で書かれており、このパートがあることで『自伝』はさらに注目すべき歴史の一級資料になったと考えられる。
基本的にクロニクルとして書かれている本でありながら、前半部と後半部で、あたかも2冊の本を読んでいるような味わいがある。図らずも中公文庫では上下巻に分かれているが、上巻は苛烈なエピソードに彩られながらも、指導者としての才覚が開花していくまでの上昇気流が流れている。イスラム教徒ということばかりでなく、後半生では妻以外の女性を徹底して遠ざけてきたマルコムXだが(そこには少なからず女性蔑視の感覚がないでもない)、上巻には淡いロマンスの思い出も語られている。スパイク・リーが映画化した『マルコムX』では、そのあたりはむろん、しっかり表現されている。

そして下巻。事態は一気に緊迫の度合いを深める。メッカへの巡礼のくだりは、本書全体を通じて最も幸福感に満ちたページなのだが、そこで「白人との徹底的な分離主義」から、融和に向けた努力のほうに考えを変更しつつあったマルコムがアメリカに帰国すると、不穏な空気と暗雲が辺りを支配するようになる。つまり、マルコムの考えに反発する様々な勢力から狙われる存在になるのである。
本の冒頭で、マルコムはレストランなどの公の場で人と会うときには必ず「戸口に向かった席に座らせてもらっていいだろうか」と言ったというエピソードが紹介されている。これは、出入りする人間を一人残らず見渡せる警戒態勢を意味しているが、また別のページでは、このようなレストランやカフェで取材などを受ける際、「クリームで薄めたコーヒーをやたらとおかわりして」、例えばこんな事を口にしている。
「白黒まざっていていいのはコーヒーだけだ」。
個人的にここは深い印象を残すポイントなのだが、それはマルコムXという人の底知れぬ孤独を感じるからである。妥協を許さない発言として紹介されているのかもしれないが、なんだかクリームを入れすぎることの言い訳のようにも聞こえる。もしかして、ブラック・コーヒーは飲めなかったのじゃないかい? マルコムX!

『完訳マルコムX自伝』を読めば、「非暴力主義」のキング牧師に対して、マルコムXがけっして単なる「暴力主義」などではなかったことがよくわかる。「白人は悪魔だ」という徹底した分離主義から、メッカ巡礼後には認識が変わり、「誠実な白人」との対話を真剣に模索していたこともよくわかる。
歴史上の著名人との束の間の邂逅シーンも魅力的だ。ビリー・ホリデイやモハメド・アリ(カシアス・クレイが本名だが、マルコムと出会ったことによりイスラム教に改宗した)といった人々が星座のように移ろってゆく。靴磨き時代には多くのジャズ・ミュージシャンたちの靴を磨いたが、その中にはデューク・エリントンが含まれていたという。

日本の読者にとって、黒人の闘争や受難の歴史は、本当に遠い存在である。しかし、バラク・オバマが登場した現在、かつてアメリカという国に、マルコムXという指導者がいたという事実、その考えや目指していたところの理想は、再び読まれてもいいのではないか。
キムタクが出ているカップヌードルのCFのセリフで、「アフリカ。ここで人類は誕生した。夢を追って」というのがあって(引用は不正確です)、そのあともう1回、「夢」の一語を発音するのだけれども、これを見たらアフリカ系アメリカ人はどう思うのだろうか? マルコムXも、一時期は急進的に主張した「アフリカ回帰」だが、これこそは、アメリカ人だからこそ熱烈に志向する、しなければならない「夢」だった。アフリカとアメリカ、両大陸間に引き裂かれた「夢」……。
そのいっぽうで、なんとまあ一気に抽象化された、ペラッペラのカップヌードルの「夢」であることか。なーんて、そんなこと言う資格は筆者にはありませんが(ずいぶん食べてきたしね)。でも、なんだかなあ……と、ちょっと思ってしまうな。

できれば、ウィキペディアなどであらかじめ知識を注入することなく、いきなり読み始めてください。ヘヴィといえば確かにヘヴィ、けれどページを次々に踏破していくことの快楽が、間違いなくこの本にはあります。

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