地名について書かれた書籍は時々出版されて、地名の由来や、この前の平成の大合併のような大きな変革のあとに「こうなりました」と教えてくれる本などいくつかのタイプがある。
この本は、地名に関する歴史も十分踏まえつつ、日本の地名というのはどういう風に付けられてきたのかがよく理解できるようにできている。
さらに、平成の合併によって生まれた地名、消えた地名など極く最近の話も盛り込まれているのが興味深い。
私は、かつては取材の旅によく出かけていて、行った先の市町村の地名を聞いてその由来を教えてもらったり、類推して相手に話してみたりして楽しんできた。そうすると「県の名前から、市町村、その下の大字(おおあざ)、小字(こあざ)」まで様々な由来や歴史があり、時に、過去の事件、所有していた人の名前、または地形、さらにそこに実る植物や群をなして棲んでいる生き物、などにちなんで地名が付いている、ということがよくわかる。
南へ行き北に行ったときに、同じ地名、例えば大曲などという地名があって、そこの地図をよく見ると地元の大きな川がそこで大きく曲がっていて、なるほど「大曲」だと納得することがある。
また、「中野があり中原がある」と、野と原とはどう違うのだろうか? と考える。地形の命名からすれば
ちゃんと野と原には違いがある。それでいて「野原」という言葉あるのだから、共通点もあるわけだ。
こっちから歩いていった道が二つに分かれているとことが「追分」で、歩いていくと、もう一方から道が見えてきて一本になるところが「落合」と呼ばれていることが多いのを見れば、ははぁ、と納得する。
それから城下町だった市街地では、地元がその地の歴史的背景を大切にする、古い町並みを保存しているというようなことがあると、多くは江戸時代のままの町名が残り、さらにその周囲はもっと古い時代の地名が保存されていることも多い。
そうした、元城下町で現在は市になっている土地に旅をした場合、江戸時代に「廓」だった地区を探しておくと、おおよそそこは昔からの飲み屋街である。
区画整理だの駅前再開発だの、市庁舎周辺に集まる「地元の官庁街」によってできた、近年のペカペカした飲食店街と違って、優れた居酒屋やちょいとわけありのオバサンが一人でやっているとか、もう地元の酒しか置かないと決めている頑固者がやっているとか、地元のいい飲み介を育てた店などが時代を経た佇まいで並んでいる。