自分の弱さを知り尽くして生き、別れた妻に未練があって時に会話を交わす関係を保ち、雇われであっても徐々に警察官の誇りを取り戻していくストーン。その彼が、かなり女性にもてて、それでいて節度を失わない男女関係を保つのがなかなかいい。独立した立場の女性とスッと仲良くなる展開が、少しばかりうらやましい。
第一作では最後になって、(確か)街を支配しようとする人間との対決があり、結果、彼はこの街の人に警察署長として認められるようになる。もともと優秀な警察官だったのだから、アルコールから逃れ離婚の悲しみが癒えれば、過去の精神的な打撃から立ち直れる。誇りをもった警察官に戻れる、という流れだ。そう簡単にはいかないようだけれど。
離婚はしたが、延々続く妻とストーンの葛藤。今でも二人で会い、食事をしたりするのだが、元の鞘には納まらない様子。それは一作目から通しての悩み、苦しみで、それを理解するためにはシリーズを順に読まなければいけないが、事件解決ということでは一冊・一話独立なので問題なく楽しめる。
この四作目は連続殺人事件発生。
主人公と一緒に事件を推理していくスタイルではないので、少し話を紹介すると、被害者は心臓に拳銃の弾を二発撃ち込まれて死んでいるのである。どの被害者もそれは同じ。そして、その二発は別の拳銃から発射されたものとわかる。犯人が二人なのか、前後して別の人間に撃たれたのか、一人の人間が別の銃で二回撃ったのか? 連続する殺人事件の被害者がそれぞれにまったく関わりがなく、捜査が難航する。
読者には、犯人がわかるスタイルの小説で、主人公たち警察官がどうやってこの犯人を突き止めていくかという展開になる。
日本以上に、事件が起こると警察の責任ある人間がマスコミの攻撃にさらされるアメリカ。全然進展が無いことをテレビで知り、業をにやした街のお偉いさんが、他からの援助を仰いではどうだとストーンに持ちかけるのを、徹底的に断るところなど、読んでいて気持ちがいい。
ジェッシイ・ストーンが殺人犯人のターゲットになるのが読みどころ!
別れた妻と、この四作目で再び接近、次がどうなるかもシリーズものを読む楽しみである。
ロバート・B・パーカーといえば、大きなシリーズもの「スペンサー・シリーズ」もあるが、このストーンもなかなかいい。街の名前が、パラダイスってのが洒落ている。途中で疲れてしまうようなミステリーではなく、サラサラ楽しめる大人の軽い読み物として☆☆☆。