北茨城郡にある皇祖皇太神宮(こうそこうたいじんぐう)に伝わる「竹内古文書」には、日本の古代天皇は「天空浮船(あまのうきふね)」という飛行艇に乗って世界中を巡航したとあるし、モーセ、釈迦、老子、孔子、キリスト、モハメッドたちはみな日本に留学して新道を勉強した、と書かれているいくらか荒唐無稽の、今では偽書と断定されているが、その古文書の中に世界の人類は五色からなるとある。白、黒、黄、赤、青だ。白は白人、黒は黒人、黄色は東洋人、赤はネイティヴ・アメリカン、青は北欧の人びとということらしい。
そこまで色分けしなくとも、白はコーカソイド、黒はネグロイド、黄はモンゴロイドと今は分類されている。で、ネグロイドが最初の人類だとしたら、モンゴロイドやコーカソイドはどこから生まれたというのか。この本では少し極端ながら、そしてどこか危うい説、きっと差別的なニュアンスだと文句を言い出す人もいるだろうとは思うけれど、実に明解に黒人から白人が誕生した理由を推理してくれる。これにはぼくの目から何枚ものウロコが落ちた。
白人が生まれたのは、黒人の中にアルビノが誕生したからだ。それは偶発的な事件だった。そのままなら、アルビノは弱い遺伝子なのですぐに黒人種の血の中に紛れこんでしまう。それがアルビノのままでいるのは、アルビノ同士が結ばれつづけ、いつしか彼らが強い遺伝子になり、恒常的に白い肌の人間を生むようになったとしか考えられない。
常に白人種を維持していけたのはなぜか。なぜアルビノだけで結ばれつづけることが出来たのか。それは黒人種から差別され、彼らだけが別の地域に追いやられたからだ、とこの本は説く。
そうやって白人種は生まれた。追いやられたのはアフリカ大陸の北、ヨーロッパの地で、そこが白人たちの拠点となった。なぜ白人種が追いやられたといえるのか。それは気候も温暖で、肥沃な土地であったアフリカではなく、気温も低く、地味もよくないヨーロッパにわざわざ定住したのは、他から強制されたからに他ならないというのだ。
その後、北アフリカのエジプトに人類最初の帝国が築かれ、エジプト人は北のヨーロッパ地帯へと勢力を拡げ、征服地のヨーロッパの白人種を奴隷としてエジプトに連れ帰った。それが奴隷であったモーセたちの祖先である。モーセは圧制を逃れてエジプトを脱出し……だから、日本にやってきたというイスラエルの支族は、黒人ではなかったのだ。
ユダヤ人はやがてイエスという男をキリストとして崇め、キリスト教は次第に勢力を伸ばして……と、この先は長い話になる。
こういうことは、この本の冒頭のほんの一部である。暗黒の中世の宗教的偏見によるヨーロッパ中心主義とその思想に、居心地の悪さを感じていたぼくにはこの本は実に面白かった。なぜヨーロッパ文化が最上でその他の国の文化は低く見られるのか、という疑問を少しでも感じている人がいるなら、この本は多くのことを教えてくれるだろう。通り一遍、お仕着せの歴史観、文明観に染められていることの危うさを知ることが出来るいい本である。