やさしい訴え
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著
小川洋子
文藝春秋
/文春文庫
[小説]
国内
2004.10 版型:文庫 ISBN:9784167557027
価格:550円(税込)
夫から逃れ、山あいの別荘に隠れ住む「わたし」が出会った二人。チェンバロ作りの男とその女弟子。深い森に『やさしい訴え』のひそやかな音色が流れる。挫折したピアニスト、酷いかたちで恋人を奪われた女、不実な夫に苦しむ人妻、三者の不思議な関係が織りなす、かぎりなくやさしく、ときに残酷な愛の物語。
おすすめ本書評
- 欠落の世界を選ぶこと
30代半ばの人妻、瑠璃子。夫には愛人がいる。瑠璃子を殴ることもある。夫が愛人宅に出かけたある朝、瑠璃子は家を出る。行き先は実家が所有する、山奥の別荘。
久しぶりに訪れた別荘の近くには、新田という40代の男が越してきていた。犬のドナと暮らす彼は、薫という若い女性の弟子とチェンバロを作っている。新田に心魅かれる瑠璃子に、薫は彼の過去を語る。かつてピアニストを目指していた新田は、精神的な要因から人前でピアノを弾くことができなくなり、チェンバロ製作に転向したのだった。やがて瑠璃子と新田は関係を持つ。瑠璃子は彼に自分のためにチェンバロを弾いてくれと頼むが、新田はやはりその願いをかなえることができない。あるとき、瑠璃子は、新田が薫の前でならチェンバロを演奏できることを知り、薫に対し強烈な嫉妬を抱くようになる……。
長坂陽子
2010/12/15掲載
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