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『ペンギン・ハイウェイ』

2011/02/04 掲載
森見登美彦
角川書店小説] [SF・ホラー] 国内
2010.05  版型:B6 ISBN:4048740636
価格:1,680円(税込)

おっぱいは1日30分!? ペンギンハイウェイのおっぱいルール!


レビュワー/渡りに船  

 おっぱいが好きだ。

 幼稚園の頃だったか、僕はそう思った。
 おっと、勘違いしないでいただきたい。今もそう思っている。

 ある時、僕は幼稚園でスケッチブックにおっぱい丸出しのお姉さんと「星のカービィ」を並べ、お姉さんから出たフキダシに「おっぱいさわらせてあげる」と書いてカービィが目をハートマークに輝かせて喜んでる絵を描いたのを覚えている。
 詳しい漫画の定義というのはよく分からないがそれが僕の記憶の中にある1番古い自作漫画の記憶だ。
 なんともはや先が思いやられる。

 そんなおっぱい少年だった僕が最近衝撃を受けた作品が森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」という小説。
 僕は小説というのは苦手というわけではないのだが年に4、5冊も読まないのでとんと作者なんかには疎い。
 じゃあなぜこの本を買ったかというと本当に気まぐれとしか言い様がない。
 表紙が好みでたまたま手に取って読んでみたら最初の1、2ページの文章が好みだったので思わず購入してしまったのだ。
 しかしどうやらこの森見さん、今人気急上昇中の作家さんらしい。
 ツイッターで僕が「ペンギン・ハイウェイ読んだなう」とつぶやいたらすぐさま数人に「森見さんの作品いいですよね!」「その作者の○○も面白いですよ!」なんてリプライを飛ばされてびっくりした。
 そんなに人気だったのか!
 そういえば本屋のそんな感じのスペースに置いてあった気がする。
 本屋の策略にまんまとハメられていたというのか!おのれ本屋!

 さて、この小説。
 ファンの皆さんは森見さん特有の素敵なストーリーや文章のユニークさにうっとりしているのだろうが僕は違う。
 僕をそんじょそこらの賢い小説読みの方々と一緒にしてもらっちゃ困る!
 なにせ僕は前述の通りおっぱいバカ一代なのだ。

 僕が面白いと思ったポイントは主人公アオヤマ君のおっぱいに対する独特の考え方である!

 友達のウチダ君とのとある会話シーン。
 アオヤマ君はクラスのいじめっ子に憤るウチダ君に「おっぱいの事を考えると心が平和になる」と諭す。
 しかしそこは小学生のウチダ君。
「アオヤマ君はえらいと思うけどそういうことを考えるのはよくない」
 と逆にアオヤマ君は注意される。
 しかしアオヤマ君は平然とこう返す。

「ずっと考えているわけではないよ。毎日ほんの30分ぐらいだから」

 え! 毎日30分ぐらいならいいの!?
 え、いいの!?
 公的にセーフなの!?

 小学生の30分って結構長くない?とは思いもするが…
 おっぱいの事を考えるのが悪いというウチダ君の意見を否定するワケではなく、それを踏まえて毎日30分なら問題がないという自分ルールを作り出しているアオヤマ君。ものすごいジャッジメントだ。
 小学生にして物事を○か×かで考えるのではなく妥協案を考え出し自分の考えと世間との考えのバランスをとろうとしているのもすごい。

 そしてまた別のシーン
 ウチダ君は性懲りも無くこういった事を言う
「アオヤマ君はかしこいのに、そんなことばかり言うからへんだね」
 それに対しアオヤマ君は
「おっぱいがすきなことはそんなにへんなことだろうか?」
 ときたもんだ。
 ディスカッションである。
 アオヤマ君はことおっぱいに関しては常にフラットな姿勢だ。
 おっぱいがいくら盛り上がっていてもアオヤマ君の心はフラット。

 おっぱいを好きな事は変であると周りに言われても
「変だと言うのならやめよう」とは考えない。
 なぜ変なのか?
 変であると言われようともそこに理由が無ければ従う義理はない!という、まるで少年漫画の主人公のような心の強さを持っている。
 ウチダ君もこうズバッと言われると
「へんではないけど……へんだなぁ」
と、THE日本人と言わんばかりの曖昧な返事をしてしまう。
 きっとウチダ君もおっぱいが好きなのだろう。
 僕には分かる。うん。

 だって少し考えれば「おっぱいの事を考えるのは変だという理由」の1つくらい思いつくはずだ。
 ウチダ君も上辺では世間体もあるので変だとは言うがしかしここで理論づけて「これこれこういったワケで変である」と言ってしまうと「本当はおっぱいが好き」というウチダ君の潜在的おっぱい愛好心の根っこが揺らいでしまうと本能的に悟ったのだろう。
このおっぱいディスカッションはここでやめてしまうのがアオヤマ君ウチダ君双方共に平和的に終われるポイントだったのだ!

 ここで「ペンギン・ハイウェイ」の本編に少し触れておこう。
 ある日突然空き地に現れた大量のペンギンに町の人たちは大騒ぎ!
 それだけでも不思議だというのにそのペンギン達は回収されたトラックの中で煙のように消えてしまう。
 ミステリーかSFか? 奇妙な事件は続くがまだまだこれは序章にすぎない。
 そして友達のウチダ君やハマモトさん、アオヤマ君が密かに思いを寄せる歯科医院のお姉さんを巻き込んで物語りはゆっくりと謎を深めていく。

 内容は何もおっぱいばかりというワケではない。当たり前だ。
 だがあえて言おう。
 是非おっぱい好きなそこのあなた!あなたに読んで欲しい!
「おっぱい・ハイウェイ」ではないですよ? 「ペンギン・ハイウェイ」! 「ペンギン・ハイウェイ」です!
 お間違いなく!


    
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書評書籍

         
        
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『ペンギン・ハイウェイ』
森見登美彦
角川書店小説] [SF・ホラー] 国内
2010.05  版型:B6 ISBN:4048740636
価格:1,680円(税込)
 


       
  
         

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