大阪の宿
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著
水上滝太郎
岩波書店
/岩波文庫
[小説]
国内
1951.09 版型:文個 ISBN:4003111028
価格:630円(税込)
荷風主幹の「三田文学」にロマン派の作家として登場した滝太郎(1887‐1940)は,またサラリーマンでもあった.正義派で鋭い批判精神と暖かい心情をもった主人公三田は作者自身であり,きっすいのリベラリストのもっともよき典型といわれている.友人の田原,芸者のうわばみなど多彩の人物を配し,大正末期の大阪の風俗が生きいきと写し出されている。
おすすめ本書評
- 旧式のプライバシー
大阪の宿である醉月にプライバシーということばはない。あるいはプライバシーということばの外延が現代のそれとはおおきく異なっている。
というような書きかたをすると小難しくてなんのことだか判らないと思いますが、ようするに壁が薄いのでどの部屋で会話しようとも筒抜けだし、自分の部屋にもしょっちゅう女中や旅客が出入りして、もし女の子なんか連れこもうものなら一夜にして周知のところとなるような宿だということです。旅館もホテルも鍵付きがあたりまえの現代に暮らすぼくにとっては、人間の関係がこんなかたちをしていること自体に驚きました。
藤田祥平
2012/01/10掲載
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