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著書刊行100冊突破記念!!『濃縮四方田』
ザ・ベリーベスト・オブ・四方田犬彦

現時点の刊行予定、はやくも26冊。売文渡世はまだまだ続く

―― さて、『濃縮四方田』には今後の「書物刊行計画」が出ていまして、126冊目までの予定があり、すでに版元が決まっているものだけでもなんと11冊あります!

四方田 そうなんだよねえ(笑)。先物買いとでも言いますか。しかしこれはすべて実行します。書けると思っているからもう出しているわけで、「書けるかも」くらいのものはまだ他にもいろいろあります。

―― まだまだいろいろ、ですか! では小説はいかがでしょう。

四方田 これは真面目な話ですが、私がどうして小説を書かないかというと、周りの人に迷惑をかけるからです。小説家というのはあまり実人生を生きないから、どうしても周りの人をモデルに書いちゃったりする。みんな勉強する時間がない。それに私は、小説は19世紀のものだと思っています。チャールズ・ディケンズとかユゴーとか、ドストエフスキーとか。オペラと小説は19世紀で、20世紀は映画ですね。「中上健次のことを書いたじゃないか」と言われますが、私は中上を小説家と思っていません。あれはなにか、一つの強靭な反抗する意志です。スサノオノミコトみたいなものです。中上健次論を書いた後に、いろいろな雑誌から文芸時評を書かないかと言われましたが、すべて断りました。

それと、業界というものに興味がありません。映画だって、ベストテンを選んだりしないし、映画時評を書かない。だいいち映画雑誌に書きません。学会や党に入っていない。徒党を組むのが嫌いです。だから澁澤龍彦さん、種村季弘さんなど、いつも1人でやってきた人を尊敬してきました。

―― 『濃縮四方田』の中で、『GS』(冬樹社)について、「世代の旗を振った唯一の経験」と書いておられます。

四方田 『GS』は後悔しています。当時は、やってみたかったんでしょうね。あれでGS派と非GS派という不毛なくくりができた。「GSに一度も書かせてもらえなかった」というのでうらんでいる人がいるみたいですが、たまたまぼくがその人を知らなかっただけで、排除する気なんてまったくありませんでした。残念なのは、あの雑誌で当時組んでいた人たちが、その後みんな書かなくなってしまったことです。実は中沢新一も誘われた1人ですが、彼は断った。ああやって徒党を組むことはダメなんだということをちゃんと見抜いていたわけで、その点はあっぱれだと思いますね。
要するに、こう言えるかもしれません。『GS』に集っていたほとんどの人たちは、ものを書くなんていう効率の悪いことにはさっさと見切りをつけ、学内政治とか、なんとかホールを建てるだとか、そういう二桁も金額が違うようなことに関心が移ったんだと。なのに四方田はあいかわらず原稿用紙1枚いくらで締め切りがいつですとか、そういうことをいまだにやっているにすぎない。「おまえが取り残されているんじゃないの?」と。

まあしかし、誰がどう考えようとかまわない。私は、ジャンルなど関係なく、自らの興味に従って書きたいことを書く、売文渡世を続けられる限り続けていくまでのことです。

―― ありがとうございました。

 

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