書評の楽しみを考える Book Japan

素敵な読書カフェめぐり神保町編も今回でひとまず最終回です。最後を飾るのは神保町の老舗喫茶店「神保町ラドリオ」です。1949年の開店で、2009年で何と60年。半世紀以上、神保町で生活する多くの人々にとって憩いの空間で在り続けています。推理小説家・逢坂剛が直木賞の発表を待ったというエピソードでも知られており、本の街・神保町のカフェを語る上で欠かせない存在といっていいでしょう。日々のせわしない生活の中で、時が止まったかのように神保町にあり続ける空間。そのレトロな雰囲気の中で、ゆったりと読書をお楽しみいただけます。

神保町駅A7出口から徒歩約2分。実はお店があるのは、神保町編その1でご紹介した「ミロンガ・ヌォーバ」のはす向かい。細い路地の右手に、スペイン語でレンガという意味の「神保町ラドリオ」がその独特な存在感を放っています。店内に入ると足下も歴史が刻まれたレンガ造り。暖炉があったり、レトロな小物が店内の所々に置かれていたり、その雰囲気はヨーロッパの昔ながらのパブやバルを思い起こさせます。店内の照明は全体的には少し暗めですが、各テーブルではレトロな照明が手元を照らしているので読書にも問題ありません。

左手にはカウンター、右手と奥に1・2人席や4人席が並んでいます。少し低めの赤いビニールレザーのイスは身体を預けるのに丁度よく、使いこまれた木製のテーブルにコーヒーと本が揃えば、心地よい読書空間の完成です。特筆したいのは、同店には読書利用に特別オススメの席がある、ということ。それは奥にある1人席。読書をはじめ、書き物などに利用する人も多く人気のこの席は、1席オンリー。お店に入ったら、まずはこの1人席が空いているかチェックするのを忘れずに。空いていたならば迷わず座ってみたいものです。

お店はシャンソン喫茶として開店し今にいたっており、店内BGMはシャンソン中心。今なお世界中で最も愛されているシャンソン歌手の1人であるエディット・ピアフをはじめ、様々な名曲の中からその日に合わせた曲をセレクトしています。古いレコード音源のものもあり、その僅かにノイズを含んだサウンドはまるで昔のラジオから流れているかのよう。ノスタルジックな空間を、よりいっそうムーディーに演出しています。音量も耳に心地よい適度なもの。読書も集中して楽しめます。

ドリンクメニューは、コーヒー9種類をはじめ、紅茶やソフトドリンクなど25種類以上。中でもオススメなのが、神保町ラドリオが日本ではじめて紹介したというウインナーコーヒー。濃い目のコーヒーにホイップクリームをかぶせたウインナーコーヒーは冷めにくく、ドリンクをゆっくり飲みたい読書にピッタリ。ウインナーコーヒーはあまり飲んだことがないという方も、ぜひ国内初の味をお試しください。また、ブレンドコーヒーは2杯目以降がなんと100円とおトクなので、こちらもオススメ。ちなみに、カフェタイムは18時までで、コーヒーの注文は19時までとなりますのでご注意を。18時以降はバータイムとなり、オリジナルカクテル「神保町」などアルコール類も楽しめます。

フードメニューでは、日替わりのランチやパスタ、特製チキンカレーなどに、コーヒー・スープ・サラダが付いたランチセット（950円）が定番。季節によって変わる手作りケーキも人気で、ドリンクとのスイーツセット（670円）は読書を楽しむのにうってつけのセットメニューです。

レンガという名を持つ神保町にある昔ながらの喫茶店「神保町ラドリオ」。その時間が止まったかのようなレトロな雰囲気の中で楽しむ、ウインナーコーヒーの豊かな味わいとゆったりとした読書時間。これぞ、神保町ならではのカフェ・タイム！
それでは、ぜひ素敵な読書カフェの午後をお過ごしください。神保町編は今回までとなりますが、次回からも読書にもってこいのカフェをご紹介していきますのでお楽しみに！

「日常の中にある存在として、ランチに、コーヒータイムに、読書タイムにと気軽に利用していただければ嬉しいです。美味しいコーヒーとランチをご用意してお待ちしています。」と店長の菅原さん。お気に入りの作家は時代小説の大家・山岡荘八だそうです。NHK大河ドラマの原作となった「徳川家康」や「伊達政宗」をはじめ、多くの作品を愛読書としてあげていただきました。ちなみに菅原さんは、幕末・明治維新を舞台にした公演などを手がける時来組（ときぐみ）という劇団に参加されています。ぜひホームページでチェックしてみてください。
http://www.tokigumi.jp/

店内には懐かしさ漂うインテリアやノスタルジーを誘う小物などが飾られていて、時が止まったかのようなレトロ気分満点。