7年間の結婚生活は、夫が若い、新しい妻を求めて破たんした。金髪碧眼のバービー人形のような完璧な美人・アレッサンドラは、障害を持つ、親のない新生児を養子縁組したいと考えていたが、夫は一顧だにしなかった。夫に捨てられ、大きな屋敷と3台のキャデラックで離婚を決めた彼女だったが、まもなく屋敷も車も抵当に入っていたことがわかり、一文なしになってしまう。そのせいで、唯一の希望だった養子の件も白紙に戻ってしまったことを知った。
だが、不幸はこれだけではすまなかった。夫が射殺体で発見されたのだ。彼は暗黒街に関わりがあり、しかも裏切り行為を働いて、100万ドルをかすめ取っていたという。屋敷はマフィアによってズタズタに荒らされ、彼女はマフィアのボス、トロッタから、48時間以内に夫が隠した100万ドルを見つけて返さなければ殺す、警察に告げれば恐怖のかぎりをつくして殺す、という。
一方、FBIでは、トロッタを捕まえるためのチームが組織されていた。かつて妻をトロッタに殺された捜査官ハリーもチームの一人として、アレッサンドラの件を利用してトロッタを捕まえようと、彼女のボディガードを買って出る。はじめは反発しながらも、次第にお互いの傷に気付き、アレッサンドラとハリーは惹かれあっていくが、トロッタの追手が迫っていた。
ハリーは長身のハンサム、少々強引なところもあるものの、射撃の名手で、検挙率はとても高い優秀な男。ただし、まるで命を投げ出すような捜査方法が、周囲からは心配されています。二人の幼い子供をコロラドに匿いながらも、妻を失って以来のワーカホリックで、めったに子供の顔も見られず、義理の姉からは、子供を養子縁組したいと申し入れられており、子供を手放したくない、しかしトロッタを捕まえたいといと、思い悩んでいます。彼は初め、アレッサンドラのことを財産目当ての女性だと思い、距離を置いていますが、彼女の心の傷や優しさに触れ、ニューヨークでの警護から、子供たちをトロッタから隠しているコロラドへの長いドライブに出るのです。
前半のスピーディでサスペンスフルな展開もさすがという感じなのですが、なんといってもドライブ中の身の隠し方などのサバイバル指導が、軍事ロマンスで腕を鳴らした、著者の面目躍如たるところ。美貌を武器に世間と闘ってきたアレッサンドラも、ハリーの彼女を守りたいという気持ちに打たれ、徐々に変わっていくのです。
さらに読みどころは、ハリーの相棒・ジョージ。右京さんと亀山くんというよりは、あぶない刑事のタカとユージ的コンビネーション芸とその友情はなかなかのもの。人当たりの良さなどを考えると、ジョージがユージ役、ハリーがタカといったところでしょうか。そして、ジョージはジョージで、離婚した元妻がFBIの上司で、元妻に似たストリップダンサーと三角関係になったりと、脇役たちのなかでもエピソードがよく練られていて、これが本筋にもかかわってきます。ロマンスとしてはもちろん、サスペンスとして読んでも、いい点をつけたい、RITA賞に輝く秀作です。☆☆☆☆
サスペンス度☆☆☆☆☆
あぶない刑事度☆☆☆☆☆
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
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おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |