1813年、ロンドン。貞淑な、世間から尊敬を集める貴族の未亡人たち5名からなる、〈未亡人救済基金〉の理事会で、その衝撃の発表はなされた。
「この冬、どんなふうに過ごしていたと思う? すごく楽しかった。だって、愛人と過ごしていたんですもの」
理事のひとりで、2年前に幼なじみの夫デイヴィッドを亡くしたマリアンは、あからさま性愛の話にたじろいだものの、愛人作りに目覚めたペネロピの「貞淑を求められる処女じゃないのだから」というあっけらかんとした態度と、内側から輝くようなはつらつとした美しさに、すっかり楽しくなってしまった。さらにペネロピは、彼女たちにある提案をする。私の幸せをみんなにも分けてあげたい、だからみんなも愛人を作りましょう。そしてお互いに協力しあって、成果を報告し合うの、と。その名も〈陽気な未亡人同盟〉として!
メンバーでも最年少のマリアンは、ほかのメンバーのすすめもあり、積極的に愛人探しに乗り出すことを誓う。濃い茶色の髪と瞳を持つ知的な美女、マリアンは、その気になればどんな男でも落とせると言われていた。だが、候補にあげた男たちは、初め気のあるそぶりをみせても、なぜかことごとくマリアンを避けるようになったり、マリアンを失望させる行動をとったり、あるいは不慮の事故で予定をキャンセルしたりと、なかなか愛人にならない。じつはその背後には、マリアンの亡夫デイヴィッドの親友で、現在はマリアンの親友でもある、アダムの手引きがあった。
アダムは、砂色の長髪に気だるげな緑の瞳の美男で、社交界では、ドン・ファン的に浮名を流し続けていたが、マリアンとはデイヴィッドが死んだあとも親密な友情を築いていた。互いに、心の奥底に、恋情を秘めて。
アダムは、その日、マリアンに、婚約の報告をしようとしていた。マリアンは永遠にデイヴィッドのもので、自分のものにはならないのだから。だが、婚約の報告の直後、反対にマリアンから愛人を作りたいと相談を受ける。
最初は、互いの婚約、愛人づくりに激しく反対しあったふたりだったが、表面上は、互いの決断を受け入れ合う。しかし、水面下では、相手の恋を邪魔しようと、やっきに。そんなひねくれたふたりの恋は成就するのか? あるいは、マリアンは愛人作りに成功できるのか?
著者のキャンディス・ハーンは、本邦初邦訳のロマンス作家。1995年にデビューし、リージェンシーもののヒストリカル・ロマンスを中心に描き続けています。本作は、〈陽気な未亡人同盟〉の第1作。貞淑な未亡人たちが恋に目覚め、ベッドの事情についてあけすけに話し合う様や、ファッションや女性の自立といった話題を明るく扱うところは、キャッチコピーの、リージェンシー(英国摂政時代)版Sex and the Cityに、偽りのないところ。小さな扇子で殿方にイエス・ノーなどの女性の気持ちを伝える方法や、パーティでの過ごし方、姑・小姑などとの複雑な関係や女同志の友情など、ロマンス以外の読みどころも満載。
また肝心のロマンスのほうでも、世間体を重んじる貴族社会で、亡夫の親友、親友の妻を相手に、しかもすでにアダムのほうは婚約を発表してしまった状態であともどりできるのか、相手の、そして自分の本当の幸せはどこにあるのか、など、ジレンマをかかえてジリジリしつつも、ユーモアを失わない軽妙なタッチで描いています。
ちなみに〈陽気な未亡人〉シリーズは、まだまだ続くとのこと。同盟メンバーは5名いるのですが、すでに愛人持ちのペネロピを除いて、2名の長篇と1名の短篇が書かれています。☆☆☆☆☆
エロティック度☆☆
女子&男子の友情度☆☆☆☆☆
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
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おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |