かつて、喫茶店における定点観測というしばりの中で書いたエッセイ『去年ルノワールで』(マガジンハウス)で、脱力系の笑いのセンスを発揮したせきしろ氏と、お笑い芸人の又吉氏が、なんと“自由律俳句”に挑戦した!
自由律俳句といえば、河東碧梧桐に始まり(代表作は「曳かれる牛が辻でずっと見回した秋空だ」)、種田山頭火(代表作は「まつすぐな道でさみしい」)と尾崎放哉(代表作は「咳をしても一人」)の登場によって一気にメジャーになった、俳句の形式である。
そんな、だれもが「自分でもできそう!」と思ってしまうけれど、いざやってみると、形式からの自由さがわざわいして、これでいいのかと不安になってしまう、自由律俳句。
それを2人合わせて469句もどどーんと発表し、そこに、エッセイ27篇と「ダメ写真」をたっぷり加えて、ソフトカバーの一冊にまとめたものが、この『カキフライが無いなら来なかった』だ。(ちなみにタイトルの句は、又吉作。)
ちなみに作品はこんな感じ。
[せきしろ作]
・ひとりになって玄関が広い
・始発電車に眠る人と眠れぬ人と登山者
・不機嫌なのが伝わってなくて驚いた
[又吉直樹作]
・ポケットに五円玉いつのものか
・一巻を開いたばかりに何もせず朝
・終電まで駅の隅っこで二人
先達の、立派な継承者となりえていると思うのだが、いかが?
もちろん、469句も並んでいれば、これはちょっとと思うものもいくつかあるが、それについてあれこれ考えてみるのも、また楽しいものなのだ。
おのれのセンスがキビしく問われるこんな本を、よく作ったねえと著者の二人を賞賛したくなるし、短いフレーズだけで、その「世界」や「感情」をどうやって表現するかという大問題に真摯に取り組む二人の姿勢に、「表現なるもの」の奥深さを再確認することにもなる。
とやかく言う前に、ご一読を。
軽やかさと深さにノックアウトされたところで、☆☆☆☆☆!
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
---|---|
おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |