新人の作品も紹介しておきましょう。『地取り』を書いた飯田裕久は、ノンフィクション『警視庁捜査一課刑事』(朝日新聞出版)の作者である。同書は、元捜査一課の刑事が書いたという点で話題になった本で、今回がフィクションのデビュー作ということになる。地取り、というのは事件発生箇所周辺をブロックに区切り、目撃情報や有力情報の聞き込み捜査を行うことだ。東京・下北沢で父娘が刺殺されたという事件が発生し、ベテラン刑事の釜本が年下の野島と組んで捜査に取りかかる、というのが物語の発端だ。
さすがに本職だけあって、ディテールは異様なまでにくっきりしている。きっとあれだな、警察小説を書きたいと思っている作家志望者がこの本は買うな。それだけで千部は売れる。そういう情報の部分はおもしろいのだけど地味かつ単純極まりない話なので、読書中は少々不安であった(活字がやたらに大きく、ページ数のわりに早く読み進められるのも、スカスカ本なのではないか、という懸念を煽る)。しかし読み終わってみると、意外なほど着地は巧く決まっていた。なるほどベテランが若手に刑事魂を教える話なのですね。主人公が説教臭くないため、気分良く読み終えることができた。星はおまけして☆☆☆。
とてもおすすめ | ☆☆☆☆☆ |
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おすすめ | ☆☆☆☆ |
まあまあ | ☆☆☆ |
あまりおすすめできない | ☆☆ |
これは困った | ☆ |