ワインでこれほど遊んでいる本はない。特に日本ではワインで遊ぶことをしないから。
日本のワインの(非常に狭い)世界では、かなりな有名人である葉山考太郎だが、多くの本を読んでいる人でもこの人の名前だけで本を手に取ることはないだろう。
ワイン本は一般にワインの知識や歴史を教えようとするか、カタログ的な本になってしまうかである。ワインを覚えよう、ワインを買うための参考にしようと手に取るのが基本で、ワインを遊ぶ、あるいはワインで遊ぶような本をそうそう選ぶことはないと思う。多くの日本人にはワインを遊べるほどワインに関しての知識がない、というのが本当のところだと思う。
葉山考太郎の凄いところは、膨大な量のワイン、特にシャンパーニュを沢山飲んでいること。年間バスタブ一杯分のシャンパーニュを飲んでいるという。毎日1本。それ以外に泡のでないワインも十分な量を飲んで、ワインについて時に本を、時に雑誌のコラムを書いている。
そういう人物だからワインの知識が豊富なのはいうまでもないが、実際飲んで知っている強みがあり、その知識と体験を面白おかしく活かす想像力があるところが魅力だ。それに、こういう本が書ける力、持続力がある。
『クイズでワイン通』というぐらいで、ワイン本としても珍しい本だ。クイズに答えていけば、ワインの知識が身につくようには配慮されている。とはいっても、面白いクイズを主体にして編集された本なので、筋道の通った知識が身につくとは断言できない。
大体、クイズ自体が、グラス一杯のシャンパーニュに含まれる泡の数は「新潟、北海道、大阪府、東京都」このうちのどの都市の人口と同じぐらいか? などという問題を含んでいるので、必要な知識かどうか怪しい。
ただ、本自体は大笑いしつつ真剣に考えるようにできている。初級問題には、ワインを1本造るのに何房の葡萄が必要かという、至極真っ当な問題もある。徐々に難しくなるように並んでもいる。
この本の帯には、101問の問題のうち、10問できれば「前座」、30問正解で「二つ目」、50問で「真打」とある。編集者が落語好きなのだろうと想像がつく。
本の帯で紹介されている問題は。
Q.オリも出ないのにシャンパンボトルの底は、なぜ凹んでいる?
Q.人に愚かなことをいわせるワインはボルドー? ブルゴーニュ?
Q.白ブドウと黒ブドウ。できるワインはなに色?
Q.スクリューキャップのワインが増えている。その理由は?
Q.ときどき目にするようになった「春ボージョレ」。これってなに?
Q.「世界最高の辛口白ワインは?」ときかれてワイン通全員があげるのは?
Q.ワインを氷バケツで冷やすとき、1度下げるのに何分かかる?
Q.シャンパンの生産者に「飲みごろはいつ?」と聞くと全員なんと答える?
Q.黄ワイン、黒ワイン、緑ワイン、灰色ワイン、紫ワイン。存在しないのは?
こうしてみると、かなり真っ当で、真面目な問題が続いているようだが、ワインを飲み始めて、持続して3年以上飲んでいる人あたりにはすこぶる面白い本だと思う。
クイズの解答の解説に様々な知識が盛り込まれているとはいっても、全然ワインに興味を持っていない人には、難しい本でしょう。それでもワインに限ったクイズだけが101問も並んでいる本は他にない。ワインバーの片隅に置くには最適の一冊。
最近、非常に豊かになった人がいる中国でシャンパーニュや偉大なシャトーのワインが飲まれるようになったというけれど、この本の中に、
中国語表記「莫埃和尚東」は、有名シャンパーニュの何か? という問題もありました。
日本でとても有名なシャンパーニュは「佩里尼翁修士」と表記するそうです。おわかりか?