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ルイ・ヴィトン シティ・ガイド東京2009(日本語版)

ルイ・ヴィトン

バッグの中のルイ・ヴィトン。

reviewer/相川 藍

『ルイ・ヴィトン シティ・ガイド東京2009』が、ルイ・ヴィトン各店舗と紀伊国屋書店で発売された。

1854年の創業以来、旅行鞄をはじめ「旅」をテーマに製品づくりをしているルイ・ヴィトンは、10年前よりヨーロッパ諸都市を紹介するシティ・ガイドを発行。4年前にはニューヨーク編が加わり、10周年目の今年、ムンバイ編、マイアミ編とともに、ようやく東京編(英語版&日本語版)が加わったのだ。

ブランドの歴史を彷彿とさせるシューズ用トランクのイラストが添えられた序文、そして、リドリー・スコットのエピソードや黒沢清、ロラン・バルト、アンドレ・マルローの言葉が引用された東京編の序文を読めば、この本がガイドブックというよりは読み物であることがわかってくる。

『ミシュランガイド東京2008』(2009年版は11月21日発売)が見開き完結で飲食店とホテルを紹介し、カラー写真を大きく使っているのに比べると、2色刷りで文字が多い印象。内容も東京全体のガイドになっている。おおまかな項目とページ数のボリュームは、以下のような感じだ。

●必見の東京(6頁)●ホテル(20頁)●レストラン(33頁)●カフェ(8頁)●お茶の専門店(4頁)●東京の美味(12頁)●ラウンジ、バー&ナイトクラビング(18頁)●ミュージック(8頁)●ビューティー&リラクゼーション(10頁)●モード&小物(18頁)●リュクス&メガストア(7頁)●建築物(2頁)●現代デザイン、インテリア、装飾(5頁)●クラフト(4頁)●書店(7頁)●エレクトロ・ショッピング(4頁)●劇場(3頁)●ギャラリー(6頁)●美術館(7頁)●公園と庭園(7頁)

「リュクス&メガストア」にはルイ・ヴィトン以外のブランド店も紹介されているし「東京の美味」は主要なデパ地下の見どころまで網羅。ホテルとレストラン以外に「ラウンジ、バー&ナイトクラブ」と「モード&小物」に力が入っているのはさすがというべきか。海外の都市へ旅行するとき、市販のガイドブックを買って行っても「お洒落なスポットや新しい店が全然出てないじゃん!」とがっかりすることが多いものだが、この本は、東京の最前線をきっちり伝えていると思う。

写真の代わりにイマジネーションを広げてくれるのは、縦横無尽のコラムや記事。以下はそれらのタイトルの一部です。
●山の上ホテルに「缶詰」にされた川端康成と三島由紀夫 ●坂本龍一の東京 ●Sake Bar-おしゃれにお酒を楽しむなら-●DJ Alex from Tokyoが見た夜のロンド ●パルタガスの葉巻をくゆらせながらポルナレフを聴く(ブリッジバー)●華やかなりし頃は過ぎても(リキッドルーム)●アンダーグラウンド・バージョンのインキュベーター(スーパーデラックス)●Yellowを讃える ●和製ロックの新時代 ●複合化するヘアサロン ●アート化するマニキュア ●下駄の復活 ●アヴァンギャルドな着物 ●世界にはばたくORIGAMI ●松本零士の『東京2038』」●クリスチャン・ポラックが見た神田古書店街etc…

一流ホテルや旅館の解説とともに「秘密めいたコックピットのようなカプセルホテル」についてのファンタスティックな考察があるのには驚くし、居酒屋でのサラリーマンの生態を観察したフィリップ・ポンス(「ル・モンド」紙 日本特派員)によるコラムなどは、さながら短編小説のようだ。
ルイ・ヴィトンのバッグが、村上隆やリチャード・プリンスなど国内外のポップなアーティストとのコラボレーションに力を入れているように、執筆陣もフレキシブルなファッション感覚で選ばれているのだろう。

ルイ・ヴィトンのブティックに本がある。バッグや靴や服を見るついでに本を眺め、いつもと違う感覚で購入する。これだけで、もう旅だ。内外の視点、新旧の視点が入り混じり、知っている町が外国になる。このブランドらしい「伝統と革新」の精神が、脳内地図を心地よくシャッフルしてくれる。

お菓子のパッケージのようなチョコレートブラウンとローズピンクの装丁。しっかりとしたスリムなハードケース。まさにバッグに入れて持ち歩くのにぴったりだ。
価格は税込4,200円。かなり高い感じもするけれど、ルイ・ヴィトンの製品として見れば、リーズナブルといえるかも…。

ルイ・ヴィトン
シティ・ガイド東京2009
(日本語版)

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