その日東京駅五時二十五分発
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著
西川美和
新潮社
[小説]
国内
2012.07 版型:単行本 ISBN:410332581X
価格:1,260円(税込)
そしてぼくは、何も何もできない。頑張ってモールス信号を覚えたって、まだ、空は燃えている――。終戦のまさにその日の朝、焼け野原の東京から故郷広島に汽車で向かった「ぼく」。悲惨で過酷な戦争の現実から断絶された通信兵としての任務は、「ぼく」に虚無と絶望を与えるばかりだった――滅亡の淵で19歳の兵士が眺めたこの国とは。広島出身の著者が伯父の体験をもとに挑んだ、「あの戦争」。鬼気迫る中編小説。
おすすめ本書評
- 戦争と震災。ウソのチカラ。
一昨年の夏ごろ、広島出身の西川美和は、父方の伯父の戦争体験記を家族から渡される。それは1945年に招集され、通信兵として約3ヵ月の訓練を受けた伯父が、玉音放送より早く敗戦を知り、変わり果てた故郷の広島へ汽車で帰った体験を綴った手記だった。
戦争や原爆にまつわる悲惨な話を聞かされるのは頭が割れるほど嫌だと感じていた西川美和は、戦争の核心から疎外されたような淡々とした簡素な手記にどこかほっとし、自分なりにかたちを整えて他の人にも読んでもらいたいと考える。
広島の実家で取材・執筆をおこなう過程で東日本大震災が起こり、戦争と震災が彼女の中で突然リンクする――
相川藍
2012/09/14掲載
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