7月15日(火)
図らずも、本日は200ページも読んでしまった。
本当は、100ページほど進んだあたりで読書を終わらせるはずだった。一日のノルマをこなしたということもあったし、拘留されているドミートリーの裁判の前日にアリョーシャがあちこち訪ね歩き(彼は、いつもあちこち訪ね歩いている)、またぞろ饒舌で無意味とも思える女たちの会話が延々と連なり、うんざりもしていたからだ。なかなか肝心の物語が展開しないことに腹を立てて、「ドストエフスキーよ、あなたは、なぜにそこまで読者を苛立たせるのか?」と呪詛の言葉吐いたほどだった。
ところが、ところがである。つい、やってしまったのである。本を閉じる前の、欠伸しながらの、次のページのちょい読みという奴を。
すると、そのちょい読みが次のちょい読みを呼びこんでしまい、気が付けば、いきなり事件の核心を物語る場面に突入していたのだった。まったく心の準備がなかったため、狼狽えてしまったわけだが、やめるにやめられず、「ドストエフスキーよ、いつもあなたの展開は唐突すぎる!」と呪詛の言葉を吐きながら、さらに100ページ、いってしまった次第なのである。
ああ、もう、ストーリーを書かないではいられない。
そう、じつは、第3巻において、俗人代表のカラマーゾフ家の父フョードルは、何者かに殺されてしまっている。そして、フョードルと金と女のことで反目していた荒くれ者の長兄ドミートリーは、疑いをかけられる間の悪い行動をしたこともあって、親殺しの汚名の元、拘留されるという憂き目に遭っている。しかし、ドミートリー本人と三男アリョーシャは、真犯人は下男のスメルジャコフ(もう一人のカラマーゾフの兄弟)かも知れないという疑いをもっており、第4巻は、その決着を見るべく話が展開しているのである。
で、本日読んだ箇所の後半では、次兄のイワンが、それを確かめるため、なんどかスメルジャコフを訪ねたりするシーンが描かれていたのだが、ドミートリーの裁判の前夜になって、いきなりスメルジャコフが犯行をイワンに告白してしまっていたのである。しかも、これはイワンがそそのかした殺人なのだといいつのりながら……。
唐突に真犯人がはっきりし、びっくりさせられたものの、「やっぱりスメルジャコフだったか」という変な安堵感は得られたかな。
ただ、どうなんだろう、これからドストエフスキー、またなにか読者の予定調和的な快感を裏切るようなことをやりそうな気配濃厚。最後に再度ちょい読みしたところで、イワンの様子がものすごく変だったし……。もう深夜だから、それ以上はちょい読みできなかったけど、きっとなにかある。
ところで、発見が一つ。
本日の前半100ページの読書において、『カラマーゾフの兄弟』の舞台となっている街の名がスコトプリゴニエフスクということがわかった。いままで、ずうっと気にはなっていたのだが、たぶん1巻のどこかに書かれていて、それを見落としていたんだろうなあと思い込み、あえて言及せずにいた(ホッ)。
ネットで調べたところ、スコトプリゴニエフスク(Skotoprigonievsk)は家畜追込町という意味のロシア語で、架空の町ということらしい。ただ、モデルとなっているのは、スタラヤ・ルーサ(Staraya Russa)という実在する街。グーグルの航空写真地図で表示してみたら、なぜかは知らねど、ジーンときてしまった。
しかし、それにしてもだ、第4巻までこないと街の名を明かさないとは、どういう了見なのか。あるいは、なぜ、ここで明かす気になったか。不可解千万この上ない。「ドストエフスキーよ、あなたは、どうしてそこまでして読者を翻弄させようとするのか!」だ。
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