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『ブラッド・メリディアン』コーマック・マッカーシー

頭皮狩り隊による悪魔のごとき所業。そして圧倒的な文体で描かれるこの世界の謎。
この作品こそがメリディアン! 早くも2010年のベストブック登場。

【内容】

少年は、十四歳で家出し、物乞いや盗みで生計を立て各地を放浪していた。
時は19世紀半ば、アメリカの開拓時代。あらゆる人種と言語が入り乱れ、荒野は暴力と野蛮と堕落に支配されていた。
行くあてのない旅の末、少年は、以前より見知っていた「判事」と呼ばれる二メートル超の無毛の巨漢の誘いで、グラントン大尉率いるインディアン討伐隊に加わった。哲学、科学、外国語に精通する一方で、何の躊躇もなく罪なき人々を殺していくこの奇怪な判事との再会により、少年の運命は残酷の極みに飲み込まれるのだった――。

アメリカ西部・メキシコの見渡す限りの広大な荒野、砂漠のなか、このインディアン討伐隊(頭皮狩り隊)はなぜこんな悪魔のごとき非道な行為に及ぶのか、人間も含めた自然の摂理とは果たしてどんなものなのか。それが『ブラッド・メリディアン』のテーマ。
台詞は地の文、そして心理描写なし。自然の描写や人間の行動がカンマ(読点)なし高密度で繰り広げられる、小説好きを驚愕させるであろうコーマック・マッカーシーだけの超絶技巧的文体(©訳者の黒原敏行氏)によって、繰り返しこのテーマが語られます。
極悪非道な所業に暗然とした気分に陥りつつも、優れた小説を読むことによってのみ得られる愉悦に浸ることができる希有な作品です。
今年これを読まずしてほかに何を読むのか。そう断言できる圧倒的な傑作。強くおすすめします。(BJ塚本)

【著】コーマック・マッカーシー

1933年、ロードアイランド生まれ。トマス・ピンチョン、ドン・デリーロ、フィリップ・ロスと並び称される現代アメリカ文学の巨匠。大学を中退すると、1953年に空軍に入隊し四年間の従軍を経験。その後作家に転じ着々と評価を高め、<国境三部作>の第一作となる第六長篇『すべての美しい馬』(1992・ハヤカワepi文庫)で全米図書賞、全米批評家協会賞をダブル受賞。第九長篇『血と暴力の国』(2005)は、2007年度アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画《ノーカントリー》の原作となった。その後、2006年発表の『ザ・ロード』(早川書房)は、200万部超のベストセラーを記録し、ピューリッツァー賞を受賞。著者の名声を不動のものとした。

1985年発表の『ブラッド・メリディアン』は、《ニューヨーク・タイムズ》紙上で、著名作家の投票による過去四半世紀(2006-1981)のベスト・アメリカン・ノヴェルズの一冊に、また《タイムズ》誌による1923-2006年ベスト英語小説100の一冊に選出。少年と不法戦士たちの旅路を冷徹な筆致で綴る、巨匠の代表作。

『ブラッド・メリディアン』
著 コーマック・マッカーシー 訳 黒原敏行 2009年12月18日発売
定価 2310円(税込) 432頁 早川書房


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コーマック・マッカーシーの作品

ザ・ロード 早川書房

空には暗雲がたれこめ気温は下がり続ける。目前には、廃墟と降り積もる灰に覆われた世界が……。父と子はならず者から逃れ、必死に南への道をたどる。世界は本当に終わってしまったのか? 荒れ果てた大陸を漂流する 父子の旅路を独自の筆致で描く巨匠渾身の長篇。ピューリッツァー賞に輝く全米ベストセラーの衝撃作。

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すべての美しい馬 ハヤカワepi文庫

<国境三部作>第一作目。1949年。祖父が死に、愛する牧場が人手に渡ることを知った16歳のジョン・グレイディは、自分の人生を選びとるために親友と愛馬と共にメキシコへ越境し た。途中で年下の少年を一人、道連れに加え、三人は予想だにしない運命の渦中へと踏みこんでいく。至高の恋と苛烈な暴力を鮮烈に描く永遠のアメリカ青春小説。

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越境 ハヤカワepi文庫

<国境三部作>第二作目。十六歳のビリーは、家族の家畜を襲っていた牝狼を罠で捕らえた。いまや近隣で狼は珍しく、メキシコから越境してきたに違いない。ビリーは傷ついた牝狼の姿 を見るうちに、故郷の山に帰してやりたいとの強い衝動を感じる。父の指示には反して、彼は家族には何も告げずに、牝狼を連れ国境を不法に越えた。その長い 旅路の果てに底なしの哀しみが待ちうけているとは知らず——孤高の巨匠が描き上げる、美しく、残酷な青春小説。

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平原の町 早川書房

<国境三部作>完結篇。1953年、十九歳のジョン・グレイディは、メキシコとの国境近くの小さな牧場で働いていた。馬の扱いにかけては天性の才能をもつ彼は、ビリーをはじめ年上のカウボーイたちにも一目置かれていた。そんなジョン・グレイディが、娼婦というにはまだ幼いマグダレーナと激しい恋に落ちる。ふたりは密かに結婚を誓い合い、ジョン・グレイディは愛馬を売る決心までする。その固い決意に説得をあきらめたビリーもマグダレーナの足抜けに力を貸すが、非情な運命はふたりを引き裂いた…。苛酷な世界に逆らい、烈しく直情のまま生きる若者の生きざまを、鮮烈に謳い上げる、アメリカ青春小説の記念碑。

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血と暴力の国 扶桑社

ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、撃たれた車両と男たちを発見する。麻薬密売人の銃撃戦があったのだ。車には莫大な現金が残されていた。モスは覚悟を迫られる。金を持ち出せば、すべてが変わるだろう…モスを追って、危険な殺人者が動きだす。彼のあとには無残な死体が転がる。この非情な殺戮を追う老保安官ベル。突然の血と暴力に染まるフロンティアに、ベルは、そしてモスは、何を見るのか<国境三部作>以来の沈黙を破り、新ピューリッツァー賞作家が放つ、鮮烈な犯罪小説。

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