B.J.インタビュー vol.2 by Sugie McKoy 2008/11/17(株)角川書店にて
――(以下、杉江松恋)飴村さん、このたびは『粘膜人間』(応募時のタイトルは『粘膜人間の見る夢』)の第15回(2008年)日本ホラー小説大賞長編賞受賞おめでとうございます。たいへん、おもしろく読ませていただきました。正直言って私、新人作家の小説を二日間で二度も読み返したのは初めてです。そのぐらいおもしろかった。
飴村 ありがとうございます。
――授賞式で「グッチョングッチョンの小説だ」という趣旨のことをおっしゃったではないですか。なんじゃそら、と思って読み始めたら、もうその挨拶と寸分違わぬグッチョングッチョンさで。……素晴らしかったです。
飴村 光栄です(笑)。
――えーと、読者の方にお断りしておいた方がいいと思うのですが、これはひどい話ですからね。グッチョングッチョンの首ちょんぱですから。でも言葉の感覚がとても楽しい話です。陰惨な話だけど、用語に遊びがあるので暗い気持ちにならずに読むことができる。これは遠藤徹さんの(第10回・2003年)同賞の大賞受賞作である『姉飼』(角川ホラー文庫)を読んだときにも思ったのですけど、グロテスクな描写がある小説だからといって、言葉がただ汚いだけではだめなんですよね。そういう小説だからこそ、ファンタジックな要素があれば映える。
飴村 ありがとうございます。
――でもね、冒頭でいきなり「しこる」なんて言葉が出てきたのにはびっくりしましたよ。日本ホラー小説大賞史上初めて「しこる」と書いた作家ですね、飴村さんは。というか私、しこるという言葉自体、一般の小説で読んだことがないです(笑)。
飴村 はは……、申し訳ないです。
――なんですか、この文章は(朗読する)「グッチャネって何だ?」「女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすることだっ」。女のマタグライズミ……。
飴村 あ、それはマタグラセンと読んでください。
――マタグラセン!(笑)。あの、グッチャネというのは方言(飴村さんは福島のご出身)ですか?
飴村 それは違うんです。ちょっと長くなるけど、いいですか? 大学時代の後輩にベカやんという人物がいたんですよ。登場人物にも出てきますが、同じあだ名です。そのベカやんが夢を見たんです。彼がロックスターになっていて、武道館で一万人を前に歌う夢だったそうで、そのときの曲名が「グッチャネフリーダム」。
――なんじゃそりゃ!
飴村 強烈に頭に残っていたもので、使ってみました。
――ベカやんはそういう人なんですか?(どういう人なのかは『粘膜人間』を読もう!)
飴村 いいえ全然違います! これは本人の名誉のために言っておきます。
――なるほど。受賞のことばに書かれていましたが、この作品は飴村さんが見た夢のイメージから出発しているそうですね。河童の生首が道に転がっているという。なにかそれ以外に、夢のイメージから生まれた場面などはありますか?
飴村 無意識のうちに昔見た夢のイメージを入れた可能性はありますが、特別に意識はしていません。
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